レーザドップラ応用計測器 レーザドップラ速度計 ドップラ効果とは ドップラー効果(Doppler effect)とは,波(音や光や電波) の発生源と観測者の間に相対的な速度差が生じているときに、 観測者が測定する波の波長(振動数)が発生源での それと比べて異なる現象をいいます。 たとえば、右図のように波の発生源が動いているとき、 進行方向前方では一定時間内に届く波の数は多く(振動数は高く)なり、 逆に進行方向後方下流では波の数は少なく(振動数は低く)なります。 ドップラー効果の名前は、この現象を1842年に最初に研究したオーストリアの物理学者Doppler, Johan Christian (1803-1853)に由来します。 図を使って、もう少し詳しく説明します。 救急車がサイレンを鳴らしながら近づいてきた様子を模式的に考えてみます。音源がある速度で移動していて観測者は停止している場合、観測者が聴くサイレンの音は、音源の速度に影響されます。 その進行方向に立つAさんは、音源より短い波長、つまり高い周波数の音で聴こえ、そして後方に立つBさんは、音源より長い波長、つまり低い周波数の音で聴きます。これは、音波がドップラ効果により、周波数シフト(偏移)を受けたからです。ではCさんDさんの場合はどうでしょうか。この場合もシフトされる周波数は多少ちがいますが、AさんとBさんの場合と同じにそれぞれ異なる周波数のサイレンを聴くことになります。私たちが日常生活で経験しているドップラ効果は、むしろこちらの方です。これから説明する弊社のレーザドップラ速度計は、CさんDさんのように、速度を横向きの方向から捕らえるという方法を取っています。これは、正反射光から速度を検出する振動計と大きく異なるところで、散乱光の中に含まれるシフト量を横方向から差動で検出するという特徴を持ったセンサです。 構成と測定原理 レーザドップラ速度計の基本構成は、二本の照射光を、被測定物の速度方向の前方側と後方側に置き、それぞれ被測定物から反射して来た散乱光を、同一の受光部で受けるという形になっています。 この散乱光の中には、被測定物の速度情報が、光の波長変化という形で入っています。それぞれの照射光からの散乱光は、前方側では波長が短くなる方向、後方側では長くなる方向に変化していますが、その互いの波長の差をヘテロダイン検波して速度を検出しています。 K01, K02のベクトルで示す出射光による元の周波数との差fD1,fD2は、 fD1 = V ・ (K- K01) fD2 = V ・ (K+ K02) と表せます。 K01, K02の散乱光を受光したときには、fD1-fD2が受光器で得られるビート周波数となります。 fD = | fD1-fD2| = V ・ (K01+ K02) 上記は受光器の方向を示す波数ベクトルKが消え、被測定物の速度方向とレーザの照射方向が決まれば、fDが求まることを示しています。 このような構成を差動と呼び、”K01= K02”となるので K01= (1÷λ) ・ cosα fD = 2V ・ K01= (2V÷λ) ・ cosα またこれを二本の照射光の交差角φで示せば、 cosα = cos (π/2 - φ/2) = sin (φ÷2) となるので、 fD = (2V/λ)・sin (φ/2) となり、一般式は、被測定物の垂直からのずれがあるため fD = (2V/λ)・sin (φ/2)・cos⊿θとなります。 このように被測定物の移動速度Vはドップラ周波数fDから求めることができます。(AOMを使用しない場合) 速度計の特徴 レーザーを利用した、非接触速度測定や変位測定は、下記のような多くの特徴を持ちます。 非接触なので被測定物への物理的影響がない これは光学的手法の利点です。今までロータリーエンコーダのような接触式の手法では測定できなかった 「薄いフィルムや紙の速度の測定」 「高温になっている熱間圧延の金属板の速度の測定」 「センサを取り付けられない小型なメカニズムの速度などの測定」 が可能となりました。 素材を選ばないので測定対象物が広範囲 鉄・非鉄金属・各種の樹脂・木・紙・布・ガラス・セラミックなど、散乱光を反射するものであれば何でも測定できます。 また、表面が印刷されたものや、様々な色で塗られたものも測定可能です。 操作が簡単 散乱光の中から速度情報を取り出すため、厳密なアライメント調整が必要ありません。 被測定物がセンサの被写界深度の中にありさえすれば、測定可能です。 応用分野 1.紙・シートの測定 【分野】プリンタ・コピーマシン/印刷機/フィルム 【用途】紙の突入速度・速度ムラ/蛇行量/長さ測定 【使用目的】製品品質向上/製品歩留り向上/設備診断 2.ベルトの測定 【分野】プリンタ・コピーマシン/産業機械 【用途】速度ムラ/位置測定/長さ測定 【使用目的】性能・製品品質向上/設備診断 3.ロールの測定 【分野】プリンタ・コピーマシン/印刷機/産業機械 【用途】速度ムラ/回転ムラ(周波数評価)/位置測定 【使用目的】性能・製品品質向上/設備診断 4.モーターの軸測定 【分野】モーター/プリンタ・コピーマシン/産業機械 【用途】回転ムラ(周波数評価) 【使用目的】性能・製品品質向上/製品歩留り向上/設備診断 5.ギヤ/減速機の測定 【分野】プリンタ・コピーマシン/産業機械 【用途】回転ムラ(周波数評価)/伝達誤差 【使用目的】製品品質向上/製品歩留り向上 6.エレベータドア開閉の測定 【分野】輸送機器 【用途】速度測定/変位量 【使用目的】製品品質向上/設備診断 7.ロールとフィルムのすべり測定 【分野】フィルム/フィルム製造装置/印刷機/コーター 【用途】すべり測定(ロールとフィルムの速度差測定) 【使用目的】製品品質向上/装置の立ち上げ調整/設備診断 8.ギヤの噛み合い測定 【分野】プリンタ・コピーマシン/自動車関連 【用途】伝達速度(ギヤによる影響)測定 【使用目的】研究開発/製品品質向上/製品品質評価 9.ギヤと紙送り測定 【分野】プリンタ・コピーマシン/印刷機 【用途】ギヤと紙の速度ムラ・変位量 【使用目的】研究開発/製品品質向上/クレーム対策 10.紙・シートの蛇行測定 【分野】プリンタ・コピーマシン 【用途】速度ムラ/蛇行量 【使用目的】研究開発/性能向上/製品品質向上/設備診断 11.ベルトの伝達測定 【分野】プリンタ・コピーマシン 【用途】すべり測定 【使用目的】研究開発/製品品質評価/設備診断/生産 12.カップリングの影響測定 【分野】プリンタ・コピーマシン 【用途】すべり測定/伝達誤差測定 【使用目的】研究開発/製品品質評価/設備診断/生産 13.軸のねじり振動測定 【分野】タービン/産業機械 【用途】ねじれ振動測定 【使用目的】研究開発/設備立上げ調整/設備監視 14.ベルトとプーリーのすべり測定 【分野】自動車・自動車関連/産業機械 【用途】すべり率測定 【使用目的】研究開発/性能向上/クレーム対策 15.押出し機・引取り制御 【分野】産業機械/自動車関連/建材 【用途】速度測定、長さ測定 【使用目的】製品品質向上/歩留り向上 16.長尺物カッティング工程 【分野】産業機械/建材 【用途】速度測定、長さ測定・カッティング 【使用目的】製品品質向上/歩留り向上 17.電線・パイプの測定 【分野】電線・パイプ 【用途】長さ測定・カッティング 【使用目的】生産/検査/設備診断 18.溶接棒の測定 【分野】非鉄金属/自動車関連 【用途】送り速度制御/長さ測定 【使用目的】設備立上げ調整/生産監視/品質向上 19.エンコーダの測定 【分野】エンコーダ 【用途】エンコーダ補正率測定 【使用目的】設備診断 レーザドップラ応用計測器業界別事例